赤ちゃんの温泉旅行デビューに適切な年齢
私が女将を勤める「天空の湯 なかや旅館」には、25年間で4万組以上の赤ちゃん連れのお客様にお泊りいただいております。
そのお客様をお迎えしたうえで、感じていることを参考にお話ししたいと思います。
まず、私たちは「赤ちゃんとのお出かけは6か月を過ぎたあたりから」とご案内しています。
しかし、あくまで「6ヶ月」というのは目安です。
赤ちゃんの状態によっては、生後6ヶ月経ってても難しい場合もあれば、逆にそれより早くても良い場合があります。
もちろん、「何か月から温泉に入れても大丈夫?」と尋ねたくなる気持ちはとてもよく分かります。
しかし、この問いに対して「何か月から大丈夫です!」というような絶対的な答えは難しいです。
その理由は、一人一人の顔がそれぞれ全く異なるように、赤ちゃんの状態も千差万別だからです。
- 大きく産まれた子
- 少し小さめに産まれた子
- 丈夫な子
- 風邪を引きやすい子
- 首の座りが早い遅い
このようにお一人お一人状況が違う中で、「何ヶ月から」というようなことだけで安易に判断してしまうのはかえって危険です。
では、どのように判断すればよいのか。
第一条件として、
「パパやママが赤ちゃんの様子を見ながら判断しましょう」
ということです。
では、「赤ちゃんの様子を見ながら判断」とはどういうことでしょうか?
例えば、以下のような点を見て判断していきましょう。
- 首が座っているか
- 現在体調が悪くないか
まず、熱がある時にはお出かけはご遠慮ください。
その他に例えば、
- 下痢や便秘をしていないか
- 鼻水が出ていないか(常に鼻水が出ているお子さんもいらっしゃいますが・・・)
- 咳をしていないか、
- ミルクの飲みが良くないとか食欲がないとか・・・
というような点があげられます。
とにかく大人の私たちに比べて、赤ちゃんは気温の違いや距離の移動などの環境の変化には敏感です。そのため、体調を崩しやすく、気付くのが遅いと回復に時間が掛かります。
お出掛けを決める前に、目の前の赤ちゃんがどのような様子で日々育ってきているかを、パパとママが気にかけるようにしましょう。
ここでは、今までに赤ちゃんが生後6か月前であってもご利用いただいたケースのご紹介をさせていただきます。
生後1ヶ月弱(27日)が最年少記録
この月齢が最年少記録です。
でも、これはさすがに私たちでも、
「大丈夫ですか?」
「もう少し後の方が良いのでは?」
と、どちらかというと
『思いとどまっていただけないだろうか?』
というような声がけをさせていただきました(同様のケースはやはりお勧めはできません)。
このお子さんのパパがお医者さんであったために、
そのことをお互いの安心の材料として
前例のない例外的なケースとしてお泊りいただきました。
生後3か月程度は近年増えている
近年増えているケース。
これくらいの月齢でのお出かけはもう珍しくなくなってきました。
でもそのようなご予約をいただく場合には必ず
「赤ちゃんが体調を崩したときには、(当館をご利用の場合は)緊急対応の病院が、車で1時間ほどの距離になってしまうので、くれぐれも赤ちゃんの体調管理にはアンテナを張っててくださいネ」
とお伝えしています。
今考えているお出掛けは
「我が子の温泉デビュー」
ですけど、実は
「初旅行のメンタル的な主役・主人公はママ」
だと私は考えてお客様をお迎えしています。
大変な出産を終えて、ずっと付きっきりで面倒を見るママの大変さはよくわかります。
「息抜きで温泉旅行に出かけたい」
「かわいい我が子に温泉デビューの写真を撮ってあげたい」
と思う気持ち、あるいはそばにいるパパも
「ママに少し楽を息抜きをさせてあげたい」
という気持ちもあるでしょう。
それでも一緒に連れていく我が子は、とても繊細な「赤ちゃん」です。
どうか、大切な赤ちゃんの様子をしっかり見るというところから、お出掛けの第一歩を進めていただき、
「うちは赤ちゃんが〇か月頃になったら、初旅行をしようね!」
と、その日をお子様の成長と共に楽しみながらお決めいただければと思います。
「それでも3か月だけど、どうしてもお出掛けしたい」というようなパパ・ママもいらっしゃいますよね?
次からは、そういったお声に対して私の考えをお伝えしたいと思います。
3〜6ヶ月まではお風呂付客室のお風呂がおススメ
例えば月齢が3か月程度・・・標準的な育ち方であれば、そろそろ首が座るかどうか、というところでしょうか。
これくらいの赤ちゃんの場合は、お部屋にお風呂が付いている客室をご利用いただくのがおすすめです。
お部屋のお風呂であれば、時間を選ばずに家族全員で温泉を楽しむことができて、満足度は高いはずです。
寝ること
泣くこと
排泄
などで時間のコントロールなんてできない赤ちゃん・・・だから「いつでも自由な時間に、家族で温泉を楽しめる」お風呂付客室タイプをお勧めします。
6か月〜1歳までは貸切温泉を利用しよう
6か月くらいになってくると、ずいぶん赤ちゃんもしっかりしてきます。最近の赤ちゃんは、1歳前でも立ち上がるだけでなく歩けるケースもよく聞かれるようになりました。
6か月を過ぎれば、貸切専用のお風呂を楽しむことができるでしょう。
それでも、他のお客様と一緒にならない貸切の温泉がよいか、と思います。
それは、パパとママが一緒に入ってあげられる貸切のお風呂なら、何か不測の事態が起こっても、それほど慌てずに対処できるから。
赤ちゃんだけでなく、ママもゆったり温泉を楽しめるように、パパと一緒にみんなで貸切の温泉を楽しみましょう。
1歳以降は大浴場に連れてってもOK
注! 施設によってはお断りしているところもありますので、事前に確認しておきましょう。
大浴場になると、当然ですが「男女別」というハードルが立ちはだかります。
「パパだけ」「ママだけ」でお子さんとお風呂に行くわけです。
そのためには、歩けるくらいの成長まで大浴場の利用は待たれたほうがよいのでは?
と思います。
【注意点】1か月〜6か月は旅行に連れていかないことがベター
赤ちゃんとの初旅行を
「楽しい思い出にしてほしい」
というのが私の想い・・・だから6か月未満の赤ちゃんを連れた旅行を、あまり積極的にお勧めする気持ちにはなれません。赤ちゃんは、本当に繊細です。
体温調整
環境の変化に敏感
など、大人の私たちが何も感じないような本当に小さなことで体調を崩しやすいのです。
それほど遠くない国内の旅行で、命の危険に至るようなことまではそうそう起きないかもしれません。でも、お出掛けして帰ってきた途端に、赤ちゃんの
体調変化(熱が出たなど)
泣き止まない
などの対応に追われてしまったら、せっかくのお出掛けが少し残念なものになってしまうかも。
お出掛けして、帰ってきたら
ママはリフレッシュ
赤ちゃんもニコニコ
・・・そんなお出掛けを作り出すのは、私たち=お迎えする宿だけでなく、パパ・ママの考えやケアする気持ちでもあることも忘れてほしくないのです。
赤ちゃんとの温泉旅行に行く際に確認しておくべき3つのこと
さぁ、赤ちゃんの成長ぶりも含めていろいろな準備が整って
「では『温泉デビュー』旅行へ!」
となりましたら、以下のことを確認するようにしましょう。
宿が赤ちゃんの離乳食等の持ち込みがOKかどうか
宿のここ1週間の気温(最高・最低と日中と日没後)
宿が用意している寝具はどんなもの?
以上のことは
赤ちゃんの食の環境変化の負担を減らす
赤ちゃんの気温の環境変化の対応に備える
赤ちゃんが快適に眠れるように
ということが目的です。
食事はお宿で「お子さん用に」と用意されるものが、問題なく十分食べられるようになっていれば、利用してもよいでしょう。
ですが、用意されるものが赤ちゃんの成長より少し早かったりしたら、無理せずいつも食べさせている離乳食を持参することをお勧めします。
そのため、
離乳食の持ち込みができない
施設は、あまりお勧めできません。
また、まだ食べさせていない食材を宿の離乳食で初めて食べさせることは避けましょう。
ですから、お子様の離乳食の進み具合に合わなければ、
無理に宿の離乳食などを利用する必要はないかと思います。
続いては、衣類に関して。
一つ前の季節の衣類の用意を考えてもいいかもしれません(サイズは確認してくださいネ)。
なぜなら、温泉デビューするようなお宿は、おそらく街場よりは山や海など自然に囲まれている場所が多いからです。。施設によっては設備されている空調が、ご自宅のものよりも古いことはよくあることです。
つまり、室内の温度調整さえも、ご自宅よりは快適度が下がる可能性があります。そんな気温の変化にも問題なく対応できるように、一枚多く着せる・一枚少なく脱がせるという対応ができるようしておけると安心です。
寝具に関しても同じ。赤ちゃんが眠れずに夜泣きしてしまったら、それだけでお出掛けの満足度は大幅ダウン。それでも心配な方は、食事と同じく「寝具の持ち込みは可能かどうか?」をお宿に確認してもよいと思います。
「そんなことまで?」
と思われるママもいらっしゃるでしょう。
ですが、必ず必要になるわけではありませんが、「備えあれば患いなし」です。万全の準備を整えましょうね。
赤ちゃんの肌にもやさしい泉質であるか
まず一つ目に、赤ちゃんの肌にもやさしい泉質であるかを確認しましょう。
なぜなら、赤ちゃんの肌にやさしくない泉質の温泉だと、体が温まりすぎたり、湯当たりする可能性があるからです。
赤ちゃんの肌にもやさしい泉質のものには、例えば
「単純温泉」
と表記されている温泉があります。
あえてお勧めをきかれるならば、この単純温泉がイチオシとなるでしょうか。
でも、繊細なママがよく心配される「温泉デビューにふさわしい温泉の泉質」は、
「どの温泉がよくて、どの温泉が不適」
ということもないですよ。
ただし、特にデリケートな6か月未満の赤ちゃんの場合は、穏やかな成分の温泉の方を選んだ方がより安心かもしれませんね。
「赤ちゃん用のアメニティがあるか」は、あまり判断基準にしないほうがよい
赤ちゃん用のアメニティは、お宿によって大変充実している施設もあれば、シンプルな用意でお迎えしている施設もありますよね。
しかし、アメニティが充実しているから、といって、その宿が本当に赤ちゃんに優しいかというのは、完全なイコールではなかったりします。
あくまでも
「アメニティは、物」
なのですから。確かにアメニティなどは揃っているほうが荷物は少なくなりますから、そこは参考にされてよいと思います。
それよりも、お宿に「どのようなアメニティが用意されているか?」という問いかけに対して、赤ちゃん連れであるお客様に対してどのような雰囲気で質問に答えてくれるか、というところから、
「その宿が、本当に赤ちゃん連れを歓迎しているかどうか」
を判断できるかと思います。
貸切風呂があるかどうか
最後に、貸切風呂があるかどうかを確認しましょう。
貸切のお風呂は、本当に便利です。
旅館などのお風呂は、基本男女別ですから、この点ではいろいろ不都合です。
そのため、温泉デビューはぜひ貸切のお風呂で、
他の人に気兼ねすることなく、
パパとママで代わる代わる面倒を見てあげたり、
あるいは写真を撮ったり、
などなど、
パパとママが一緒に入って赤ちゃんの面倒を見ながら、というのは貸切のお風呂ならではの強み・・・楽しいお出掛けになるように、貸切のお風呂があるか、あるいは貸切専用のお風呂がなくても、貸切で使えるお風呂があるかどうかは、しっかり確認しましょう。
その際
貸切の時間
貸切に掛かる料金
貸切のお風呂に洗い場が付いているかどうか
なども確認してください。
赤ちゃん連れ旅行の持ち物リスト!「必需品」と「あると便利」なグッズはコレ|じゃらんニュース (jalan.net)
お客様が持参された持ち物でよかったもの3個
以下、お客様が持参された持ち物でよかったものを3つご紹介します!
手作りの離乳食(冷凍)・・・夕食・朝食・昼食小分けにしてあり感動!!
新聞紙・・・食べこぼしの多い時期、畳を汚さないようにとのお気遣いに感謝です。
普段使っている毛布やぬいぐるみ
・・・それがあると、知らない場所でも安心できるようです。
少しくらい汚れていても大丈夫。中学生になっても抱っこしてくるお子様もいらっしゃいます。
赤ちゃんと温泉旅行に行く際の注意点3つ=実際によくあるトラブルから
4万組を超える赤ちゃん連れのパパ・ママをお迎えした中では、いろいろなトラブルがありました。ありがたいことに、重大なトラブルやアクシデントが当館で起きたことはありませんでしたが。
でも実際に小さな赤ちゃんを、違う環境に移動させて、いつもと違う場所で飲んだり食べたり寝たり・・・という生活をする中では、たった1泊といっても様々なことが起きたりします。
ここでは過去に起きたトラブルをお伝えすることで、実際のお出かけの心構え・準備にしていただければ、と思います。ごく普通にあることとして
食べたものを戻してしまう
おねしょ
夜泣き
などがあります。
戻してしまうのは、ほとんど食べ過ぎ・飲み過ぎが原因。
パパ・ママは、赤ちゃんがなるべくいつもと同じペースでいつもと同じ量を飲んだり食べたりできるよう、普段からどれくらい飲んでいるか、食べているかの把握をしておきましょう。
そして少し大きくなると、嬉しくてハイになって食べ過ぎ・飲み過ぎしてしまうことはごく普通にありますから、そこは注意しましょうね。
あと、赤ちゃんは自分で体温調節ができないので、
・こまめな水分補給
・関節を触って汗をかいていたら、拭いたり着替えさせたり
・手足を触って冷たかったら、靴下をはかせたり、一枚多く着せたり、ブランケットを掛けた てあげたり・・・
など、「いつもと違うな?」のサインを気にかけていただきたいと思います。
おねしょなどは「普段もうちゃんとできているのに・・・」という場合でも、環境が変わることで失敗してしまうことは珍しくありません。ここは宿の布団を汚して残念な思いや余計な出費(クリーニング代が掛かることが多いです)をしないためにも、もうおむつが取れたと思ってもおむつを持ってきたり、宿からおねしょシートを借りるなど念のためトラブルに備えるという気持ちでいましょう。
夜、環境が変わって寝てくれない=夜泣きもよくあるケース。特に心配な場合は、まず事前に宿に「夜泣きしても大丈夫か」確認しておきましょう。
ちなみに当館では
「赤ちゃんが夜泣きすることは当然のことですので、大丈夫ですよ。隣のお部屋に音が聞こえてしまう場合もありますが、そこは『お互い様』という感覚でお許しいただくようにお願いしています」
とお応えしております。
それから生きている赤ちゃんですから「思うようにいかない」ということをパパ・ママが想定の中に入れてお出掛けしていただくこともとても大切です。
例えば
時間制の貸切風呂の時間直前に、う〇ちをたくさんしてしまって、そのおむつの対処に大幅に時間がとられ、貸切風呂の時間が半分くらいしか楽しめなかった
なんてことは、もう本当に珍しくない、普通にあることです。
「これも思い出の一つ」
と笑えるような心の余裕を、ぜひ持ってください。トラベル(旅行)の語源は、トラブルとも言われます。赤ちゃんとの旅行を、ちょっとしたアクシデントがあっても楽しいものにできるかどうかは、パパとママの心の余裕だったりします
長風呂しない
身体を洗ったりして、お風呂を利用する時間自体は、着替えて出てくるまでに40分~1時間くらいは掛かるものですよね。
でも純粋に湯舟に浸かっている時間は、身体の負担からも、それほど長くないほうがよいでしょう。
赤ちゃんの成長具合や浴槽内・湯舟の温度にもよるので、一概には言えませんし、ここで「〇分以内で」と指定するものでもないのであえてそこまで明確には言いませんが、長湯は禁物。赤ちゃんと一緒の場合は、ほどほどに温泉を楽しみましょう。
入浴中は目を離さない
特に大浴場など、他の人もいるような大きなお風呂に入る場合、お子さんから目を離さないようにしましょう。
お子さんがある程度大きくなっていて、トイレコントロールができるようでしたら、お風呂に入る前には、必ずトイレを済ませてくださいネ。
大浴場などは他のお客様が利用する中で、滑りやすかったりもします。ころんで頭などを打ったり、湯舟に落ちてしまうこともあるので、注意が必要ですよ。
安全に楽しむためにも「目を離さずに」ということはくれぐれもお忘れなく。
「赤ちゃんとの温泉旅行デビューは何歳から?温泉旅館の女将が解説」のまとめ
現在、育児を終えて、身軽に外出できるようになって思うのですが、やはり赤ちゃんと一緒のお出かけはいろいろと大変で楽ではなかったことを思い出します。
しかし、大変で楽ではないけど、それ以上に
家以外の場所での、普段見ることのない反応や表情、何気ないつぶやきや気づきの一つ一つがすべて
愛おしく思えたからこそ、楽でないことも乗り越えてこられたと思います。
100%開放的で、気軽なお出かけは、子育てが終わってからの次の人生に取っておきましょう。
大変で楽じゃないけど、心配なこともいっぱいあるけど、でもこの時期(年齢)の我が子とのお出か
けはその時しか経験できないんですよね。
だから、普段子育てを頑張っている自分へのご褒美として、是非旅行にお出かけください。
パパママが喜んだり楽しんだりしていると、その気持ちは赤ちゃんにも伝わるはず!!
たまには旅行してリフレッシュ!
さらに笑顔の素敵なパパママになって子育てを楽しみましょう。
その為に、まずは普段から赤ちゃんの様子をよく見てください。
そして、体調がOKと思える時を見計らって、旅行を計画しましょう。
赤ちゃんとの温泉デビューに適切な年齢は?
それは、これまでいろいろと述べてきたことを踏まえた上て、
「赤ちゃんが元気で、パパママが大変なことも覚悟して、リフレッシュしたいと思った時」
なのかなと思います。